かつて、農協といえば、自民党の有力な支持団体でした。その農協がなんと日本共産党の党大会(1月13日から16日)に代表を送り込み、挨拶をしました。
25回党大会 来賓9氏があいさつ 全中の代表や熱海市長も (赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-01-15/2010011501_02_1.html
はじめて党大会であいさつした全中の冨士専務理事は、茂木守会長のあいさつを代読し、「再生産可能な価格保障と所得補償、国境措置の維持・強化、日米FTA反対・食料主権の確立。こうした方向は我々のめざす方向とまったく同じであり心強い限りだ」と読み上げ、大きな拍手に包まれたそうです。
切り捨てられても「与党」には逆らえなかった
1980年代末以降、自民党政権は「農家いじめ」の政策を続けてきた、と思います。牛肉・オレンジの自由化。ウルグアイ・ラウンド決着による米市場開放。たしかに、国際的な流れはありましたが、一方で欧州などでしているような所得保障は行われず、主に農業土木に予算が投入されました。それで、潤った部分もあるが「農家が食べていける」体制ではなくなっていった。そして、2001年に発足した小泉政権は、地方交付税カットなど、地方切り捨てを鮮明にしました。
しかし、自民党が与党だった。このため、「お上ににらまれたら困る」ので、農民のみなさんも、組織レベルでは、自民党支持を継続せざるを得なかったのです。小泉政権時代は、小泉さんの地方たたきで溜飲を下げてしまったような大都市の有権者と、仕方なしに「与党に従っている」地方票双方を獲得しました。これに公明党の下支えも加えて、2001年参院選と2005年衆院選で圧勝しました。
2009年衆院選でも締め付けは有効だった
だが、小泉さんの政治は、一部のお金持ちが潤っただけでした。その弊害が明らかになってきた、2007年参院選、2009年衆院選で自民党は惨敗したのです。地方でも都市でも支持を失ってしまった。
さらに、民主党の小沢代表(2006年4月から2009年5月、その後は選挙担当代表代行、現幹事長)は、所得保障を柱とする農業政策を打ち出しました。それは一定の効果がありました。
自民党は、小泉政権終了後、旧来型の「えらい人へのバラマキ」で対抗しようとしましたが「直接懐を潤す」民主党への流れは止められなかったのです。
ただ、それでも、山口県や島根県など、一部の地方では自民党が「現与党」の威光を利用して優位だった地域もあります。広島県内でも、衆院選の終盤では、自民党が組織を締め付けて、巻き返し、当初民主圧勝と思われた選挙区も僅差だったりしました。
共産党を利用し民主党への牽制球?
しかし、自民党は政権から転落しました。もう、自民党に遠慮しなくても、自民党からの報復はありません。
ただ、一方で、民主党は所得保障は実施しますが、価格保障は主張していませんし、米以外の作物や畜産の所得保障についても未定です。農家のやる気を引き出すには、価格保障が必要ですし、他品目はどうするか、という問題はあります。
この点では、日本共産党の農業政策が、農家にとっては一番良いし、民主党員のわたしからみても、納得できるものです。
そこで、農協としても、民主党への牽制球も投げておきたい、という狙いもあるでしょう。そこで、「共産党ともいざとなれば連携するぞ」という姿勢を見せた、といえます。
たとえば医師の間にも、「自民党は論外としても、民主党の中にある新自由主義グローバリズム的要素も危ういなあ」という雰囲気があることは、わたし自身、なんとなく現場にいても感じます。ですから、共産党と連携するぞ、という「民主党への牽制球」は、農協だけでなく、ほかの業界にも広がる可能性はあります。
存在意義をなくした自民党
しかし、申し上げるまでもなく、自民党が一番ピンチにあるのは誰の目にも明らかです。
自民党は「冷戦を前提に、反共を旗印とする利益分配団体」というのがその存在意義でした。自民党には、極右から護憲派(リベラル)まで、いろんな主義主張の人が実はいました。それを結び付けていたのは「与党」のうまみでした。
ところが、1989年に冷戦時代の体制は崩壊してしまいました。そして、2009年、政権から転落して、利益配分機能も失ってしまったのです。
こうなると、もはや、自民党はかつての存在意義をなくしてしまったのです。
あとは、日教組の悪口を言うくらいしか、やることがなくなってしまった。小沢さんらの問題を追及しようとしても、自民党こそが、企業献金をたくさん受け取ってきたのですから「お前が言うな」ということになってしまいます。
業界団体も、各政党に対して「政策本位」で是々非々の対応を取っていく。それにより、自分たちの利益を守っていくという方向に転換していくことでしょう。
自社両党で奇妙に合致する衰退の軌跡
業界の票が、民主党だけでなく、共産党にまで流れてしまったらどうなるのでしょうか?
わたしは昨年秋、以下のようなシミュレーションを出し、自民党の危機を予告しました。
【得票シミュレーション】次期参院選で自民党を襲う深刻危機
http://www.news.janjan.jp/government/0909/0909150200/1.php
しかし、旧来の自民党支持層が共産党にまで流れ出したら、自民党は、大変なことになる。かつて、日本社会党が滅亡したとき、やはり同じように共産党にも支持者が一時的に流れていました。(その後、2000年代には、政権交代を期待して民主党に流れた)。
日本社会党は1989年に参院選で46議席と躍進したわずか2年後の1991年の統一地方選で惨敗。
さらに1年後の参院選も惨敗。その翌年の1993年衆院選で歴史的大敗を喫しました。さらに1995年参院選でも惨敗。そして、1996年衆院選では、選挙前に党自体が空中分解(民主党に多くの議員が移ったし、左派は新社会党を結成した)し、共産党を下回ったのです。
2005年に衆院選で圧勝した自民党が、2年後の参院選、さらに2年後の衆院選で惨敗したのは、日本社会党の軌跡と実に符合します。2010年参院選でも惨敗するようなら、加速度的な衰退は避けられません。2011年統一地方選も厳しい。いままで霞ヶ関へのパイプを背景に権威を維持してきた自民党地方議員が、大量落選しかねません。この統一地方選は、1995年の参院選での社会党惨敗に匹敵する惨敗になる可能性があります。
2012年頃にあるかもしれない衆院選では、それこそ、自民党は空中分解し、1996年衆院選での社民党並みの政党になり下がっていた、ということになりかねません。

魅力失い、将来は「右の新社会党」に?
これはけっして荒唐無稽な議論ではないと思います。
そもそも、政党の魅力はいろいろあります。人によってそれは違います。
「与党」であることそのものに魅力を感じる人。
クリーンさに魅力を感じる人。
政策を重視する人。
面倒見のよさを重視する人。
規律のゆるさを重視する人。
「与党」に接近することを求める層は、民主党が奪うでしょう。
政治のクリーンさを重視する層や、民主党のグローバリズム的要素を警戒する層は共産党が奪うでしょう。
面倒見のよさを重視する人なら公明党に流れる場合もあるでしょう。
わたしの場合は規律のゆるさを重視して民主党、というパターンだと思います。
自民党には、「与党」の優位性もなければ「クリーンさ」もない。「面倒見のよさ」もない。
政策はどうか? 景気対策ではなく「外国人参政権反対」や「選択的夫婦別姓反対」をメインの争点にするようだったら、とんだ失策です。むしろ、「みんなの党」などのほうが、「脱官僚」など「争点化されうる」旗印を掲げています。
自民党は道を誤れば、「右の社民党」どころか、右派イデオロギーオタクのような方にしか支持されない「右の新社会党」に転落しかねないピンチにあるのではないでしょうか?
参考リンク
新社会党
http://www.sinsyakai.or.jp/
わたしも、昔は、小沢一郎さん率いる新進党が嫌いだったこともあり、自民党に投票していたこともあります。谷垣現総裁についても、中学・高校・大学の大先輩でもあり、むしろ、お気の毒に思っています。
しかし、繰り返しますが、自民党存続の前提がなくなってしまった今、「自民消滅」は、歴史的な必然だともいえます。
「自民党における小泉純一郎は、社会党における土井たか子同様、一時的な延命装置に過ぎなかった」と後世の歴史家は結論付けるかもしれません。
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
広島瀬戸内新聞ニュース
http://hiroseto.exblog.jp/
25回党大会 来賓9氏があいさつ 全中の代表や熱海市長も (赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-01-15/2010011501_02_1.html
はじめて党大会であいさつした全中の冨士専務理事は、茂木守会長のあいさつを代読し、「再生産可能な価格保障と所得補償、国境措置の維持・強化、日米FTA反対・食料主権の確立。こうした方向は我々のめざす方向とまったく同じであり心強い限りだ」と読み上げ、大きな拍手に包まれたそうです。
切り捨てられても「与党」には逆らえなかった
1980年代末以降、自民党政権は「農家いじめ」の政策を続けてきた、と思います。牛肉・オレンジの自由化。ウルグアイ・ラウンド決着による米市場開放。たしかに、国際的な流れはありましたが、一方で欧州などでしているような所得保障は行われず、主に農業土木に予算が投入されました。それで、潤った部分もあるが「農家が食べていける」体制ではなくなっていった。そして、2001年に発足した小泉政権は、地方交付税カットなど、地方切り捨てを鮮明にしました。
しかし、自民党が与党だった。このため、「お上ににらまれたら困る」ので、農民のみなさんも、組織レベルでは、自民党支持を継続せざるを得なかったのです。小泉政権時代は、小泉さんの地方たたきで溜飲を下げてしまったような大都市の有権者と、仕方なしに「与党に従っている」地方票双方を獲得しました。これに公明党の下支えも加えて、2001年参院選と2005年衆院選で圧勝しました。
2009年衆院選でも締め付けは有効だった
だが、小泉さんの政治は、一部のお金持ちが潤っただけでした。その弊害が明らかになってきた、2007年参院選、2009年衆院選で自民党は惨敗したのです。地方でも都市でも支持を失ってしまった。
さらに、民主党の小沢代表(2006年4月から2009年5月、その後は選挙担当代表代行、現幹事長)は、所得保障を柱とする農業政策を打ち出しました。それは一定の効果がありました。
自民党は、小泉政権終了後、旧来型の「えらい人へのバラマキ」で対抗しようとしましたが「直接懐を潤す」民主党への流れは止められなかったのです。
ただ、それでも、山口県や島根県など、一部の地方では自民党が「現与党」の威光を利用して優位だった地域もあります。広島県内でも、衆院選の終盤では、自民党が組織を締め付けて、巻き返し、当初民主圧勝と思われた選挙区も僅差だったりしました。
共産党を利用し民主党への牽制球?
しかし、自民党は政権から転落しました。もう、自民党に遠慮しなくても、自民党からの報復はありません。
ただ、一方で、民主党は所得保障は実施しますが、価格保障は主張していませんし、米以外の作物や畜産の所得保障についても未定です。農家のやる気を引き出すには、価格保障が必要ですし、他品目はどうするか、という問題はあります。
この点では、日本共産党の農業政策が、農家にとっては一番良いし、民主党員のわたしからみても、納得できるものです。
そこで、農協としても、民主党への牽制球も投げておきたい、という狙いもあるでしょう。そこで、「共産党ともいざとなれば連携するぞ」という姿勢を見せた、といえます。
たとえば医師の間にも、「自民党は論外としても、民主党の中にある新自由主義グローバリズム的要素も危ういなあ」という雰囲気があることは、わたし自身、なんとなく現場にいても感じます。ですから、共産党と連携するぞ、という「民主党への牽制球」は、農協だけでなく、ほかの業界にも広がる可能性はあります。
存在意義をなくした自民党
しかし、申し上げるまでもなく、自民党が一番ピンチにあるのは誰の目にも明らかです。
自民党は「冷戦を前提に、反共を旗印とする利益分配団体」というのがその存在意義でした。自民党には、極右から護憲派(リベラル)まで、いろんな主義主張の人が実はいました。それを結び付けていたのは「与党」のうまみでした。
ところが、1989年に冷戦時代の体制は崩壊してしまいました。そして、2009年、政権から転落して、利益配分機能も失ってしまったのです。
こうなると、もはや、自民党はかつての存在意義をなくしてしまったのです。
あとは、日教組の悪口を言うくらいしか、やることがなくなってしまった。小沢さんらの問題を追及しようとしても、自民党こそが、企業献金をたくさん受け取ってきたのですから「お前が言うな」ということになってしまいます。
業界団体も、各政党に対して「政策本位」で是々非々の対応を取っていく。それにより、自分たちの利益を守っていくという方向に転換していくことでしょう。
自社両党で奇妙に合致する衰退の軌跡
業界の票が、民主党だけでなく、共産党にまで流れてしまったらどうなるのでしょうか?
わたしは昨年秋、以下のようなシミュレーションを出し、自民党の危機を予告しました。
【得票シミュレーション】次期参院選で自民党を襲う深刻危機
http://www.news.janjan.jp/government/0909/0909150200/1.php
しかし、旧来の自民党支持層が共産党にまで流れ出したら、自民党は、大変なことになる。かつて、日本社会党が滅亡したとき、やはり同じように共産党にも支持者が一時的に流れていました。(その後、2000年代には、政権交代を期待して民主党に流れた)。
日本社会党は1989年に参院選で46議席と躍進したわずか2年後の1991年の統一地方選で惨敗。
さらに1年後の参院選も惨敗。その翌年の1993年衆院選で歴史的大敗を喫しました。さらに1995年参院選でも惨敗。そして、1996年衆院選では、選挙前に党自体が空中分解(民主党に多くの議員が移ったし、左派は新社会党を結成した)し、共産党を下回ったのです。
2005年に衆院選で圧勝した自民党が、2年後の参院選、さらに2年後の衆院選で惨敗したのは、日本社会党の軌跡と実に符合します。2010年参院選でも惨敗するようなら、加速度的な衰退は避けられません。2011年統一地方選も厳しい。いままで霞ヶ関へのパイプを背景に権威を維持してきた自民党地方議員が、大量落選しかねません。この統一地方選は、1995年の参院選での社会党惨敗に匹敵する惨敗になる可能性があります。
2012年頃にあるかもしれない衆院選では、それこそ、自民党は空中分解し、1996年衆院選での社民党並みの政党になり下がっていた、ということになりかねません。

自民党と日本社会党の衰退の軌跡を比べると、ここまでは驚くほど似ている。3年後には自民党は空中分解し、社民党並みの議席に転落することも考えられる。
魅力失い、将来は「右の新社会党」に?
これはけっして荒唐無稽な議論ではないと思います。
そもそも、政党の魅力はいろいろあります。人によってそれは違います。
「与党」であることそのものに魅力を感じる人。
クリーンさに魅力を感じる人。
政策を重視する人。
面倒見のよさを重視する人。
規律のゆるさを重視する人。
「与党」に接近することを求める層は、民主党が奪うでしょう。
政治のクリーンさを重視する層や、民主党のグローバリズム的要素を警戒する層は共産党が奪うでしょう。
面倒見のよさを重視する人なら公明党に流れる場合もあるでしょう。
わたしの場合は規律のゆるさを重視して民主党、というパターンだと思います。
自民党には、「与党」の優位性もなければ「クリーンさ」もない。「面倒見のよさ」もない。
政策はどうか? 景気対策ではなく「外国人参政権反対」や「選択的夫婦別姓反対」をメインの争点にするようだったら、とんだ失策です。むしろ、「みんなの党」などのほうが、「脱官僚」など「争点化されうる」旗印を掲げています。
自民党は道を誤れば、「右の社民党」どころか、右派イデオロギーオタクのような方にしか支持されない「右の新社会党」に転落しかねないピンチにあるのではないでしょうか?
参考リンク
新社会党
http://www.sinsyakai.or.jp/
わたしも、昔は、小沢一郎さん率いる新進党が嫌いだったこともあり、自民党に投票していたこともあります。谷垣現総裁についても、中学・高校・大学の大先輩でもあり、むしろ、お気の毒に思っています。
しかし、繰り返しますが、自民党存続の前提がなくなってしまった今、「自民消滅」は、歴史的な必然だともいえます。
「自民党における小泉純一郎は、社会党における土井たか子同様、一時的な延命装置に過ぎなかった」と後世の歴史家は結論付けるかもしれません。
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
広島瀬戸内新聞ニュース
http://hiroseto.exblog.jp/

