さとうしゅういち

 広島県知事・湯崎英彦さんは「湯崎英彦の宝さがし」と銘打って、県政知事懇談を県内市町村で行う予定です。
 
 広島県/県政知事懇談「湯崎英彦の宝さがし」の概要
 http://www.pref.hiroshima.lg.jp/page/1261102027971/index.html
 
 「広島県の底力を引き出しながら、県民起点の県政を運営していくため、県内の宝さがしの一環として、知事自らが県内各地を訪問し、県民の皆様との直接対話「県政知事懇談」を行います。この懇談で得られた宝を活用することにより、今後の県勢の発展を目指す」としています。
 
 2月7日は第2回。三原市で開催されました。会場の三原能力開発支援センターのホールは傍聴者で溢れかえり、資料もなくなり、椅子を増設する有様でした。地域から推薦された12人(女性5人、男性7人)が知事と意見を交換しました。

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会場となった三原能力開発支援センター。会場は人々で溢れかえり、資料もなくなってしまった(撮影・さとうしゅういち)


 12人は、チャレンジド(障害をもった人)当事者のお母さんでチャレンジドの方の支援をされている方。生徒会長を勤める女子高校生、商工会議所副会頭、離島(佐木島)で地域活性化に取り組む方、横浜から一年前に来られた芸術文化センター館長、青年会議所会頭、男女共同参画団体代表、外国語学校職員、「絵本のおばちゃん」、家族経営で大規模化を進めている農家、会社役員、心身障害者施設職員でした。
 
 感想から正直に申し上げれば、男女比もバランスが取れており、「男性のエライ人」ばかりに偏りがちな議会よりよほど面白かったです。湯崎さんだけでなく、わたしにとっても「大漁」だった宝さがしでした。
 
 冒頭、湯崎さん自らがマイクを握って挨拶。
 
 「(県政の柱である)現場主義に基づき、県内各市町村にうかがうことにしている。宝や「宝の素」を探していく。課題をあわせて、県政に反映させる」「広島には、競争力のある産業、人材、宮島や原爆ドームなどの世界遺産がある。一方で、過疎化・高齢化・人口減少など大きな課題がある。宝を最大限活用し、広島県の底力を引出したい。人づくり、経済成長、安心できるくらし、豊かな地域づくり、県政刷新を進めたい」などと、この懇談の目的と湯崎さん自身の決意を示しました。
 
 その上で、午前中、三原市内を巡った感想を「だるま工房でだるまを作って楽しかった。筆影山の景色は素晴らしかった。一方で、商店街は一部は活気があったが、シャッター通りになっているところもあった」と述べ、「地域の活性化のために、課題を正直に話していただきたい」と呼びかけました。
 
 三原だるま工房
 http://www.mhr-cci.or.jp/tmo/daruma_koubou/
 
 筆影山 : 呉・竹原・三原 | JRおでかけネット
 http://event.jr-odekake.net/spot/9022.html
 
 三原市では、地元から推薦された12人の「特色ある活動をしている団体や個人」の中から選ばれた方が意見を述べました。
 
 ■チャレンジドの社会参画、福祉サービス「だけ」では不十分
 
 筋肉が衰える進行性の病気を持つ娘さんをお持ちで、自らもチャレンジドの方々の支援のNPOをされている阿部さんは元保育士。彼女の理念は「障がい者を何かしてもらう存在ではなく役に立つ存在として捉える」ということです。チャレンジドの方の水泳、芸術、就労のための活動をされています。
 
 それには、福祉の制度やサービス「だけ」では、難しい、とおっしゃいました。
 彼女は、娘さんのために、市内のホテル(広島空港のエアポートホテル)に依頼して嚥下食のディナーをつくってもらいました。障がいをもつ方が、家族と一緒の食材で、家族と一緒に外食が出来るようにする、という考え方です。それは、消化力が落ちた高齢者にも応用できるそうです。健常者の方からも、「病院食よりうまい」という評判で、病院食の進化にもつながるというわけです。
 
 その上で、千葉県や北海道であるような、障害者差別を禁止する「県づくり」条例を広島県でもしてほしい、と要望しました。
 
 これに対して湯崎さんは前向きに検討したい、と回答しました。その上で、「今の教育についてどうか」と阿部さんに尋ねました。阿部さんは、「地域の学校に進学できるようにしてほしい」などと答えていました。
 
 ■発信力と若者が楽しめる場所を
 
 地元、如水館高校で生徒会長を務める女子高生は、「県外の人にもっと広島県を知ってもらうことが必要だ。広島城などは、県外のものに比べると印象が薄いのではないか? ホームページも変えてほしい。名古屋城などに比べると行きたい、という気持ちが出てこない。県内にはやっさ祭り(8月)、神明市(2月)(いずれも三原市)、フラワーフェスティバル(5月、広島市)など、たくさんイベントがあるが県民でも知らない人が多い」と指摘。もっと、広島県のイベントの事を自分たちが知って発信すべきだ、と主張しました。
 
 如水館中高校ホームぺージ
 http://www.josuikan.ed.jp/

 備後路に春を告げる「三原神明市」 400軒を越える露天商が立ち並びます!!
 http://www.mhr-cci.or.jp/shinmei/

 見たか聞いたか三原の城は、地から湧いたか浮城か・・・三原やっさ祭り
 http://www.yassa.net/
 
 さらに「若者が集まれるような場所がないのでは?」と指摘しました。
 
 湯崎さんは「大人になったら広島県に残りたいですか?」とずばり質問。これに対して彼女は「大学は県外志望」と回答。一同、苦笑でした。
 湯崎さんは、「若い人がエンジョイできる場所があったらいいなあ。僕もがんばる」と引き締めていました。
 
 3人目は、商工会議所の中心市街地活性化担当副会頭。やはり彼も、若い人が福山や広島に流れてしまう、ということを指摘していました。
 
 ■「離島にも細かな配慮を」
 
 4人目は、三原市の沖合いに浮かぶ佐木島で農業を営む河野さんという男性。
 
 さぎしまのホームページ
 http://www.jyaken.ne.jp/~sagisima/
 
 佐木島は1955年に3200人だった人口が1990年には1600人、2010年には930人に激減。高齢化率は53%と、過疎化・高齢化を絵に描いたような島です。

 そうした中で、河野さんらは、1990年にこの島にトライアスロン大会を誘致するなど努力しています。また、2005年に定年退職後は、島の登山道を整備し、登山マップを作るなど観光客誘致にも努力しています。
 しかし、「活性化というけれど、活性化しないで(活力が)素通りしてしまう感があり悩んでいる」と正直におっしゃいます。
 
 「島民にとって、フェリーが第一の交通機関だ。2003年、2006年と減便と運賃値上げが相次いでいる」
 「農林水産省が、『ふるさと地域発掘事業』をしていたので、それを利用した。しかし、事業仕分けで、中止になってしまった。何らかの形で県が協力してほしい」

 「『島には宝がある。自然も多い』と久しぶりに島の外から帰ってきた女性に言われた」という河野さん。
 現政権に対しては「がんばってやろうという気持ちを踏みにじらないでほしい」と注文をつけました。
 
 湯崎さんはこれに対して、「これが現実なんだろうと思った。その土地その土地の人が考えるもので、外から押し付けるのもどうかなあ、と思った。三原市でも多様な地域があり、単位が大きすぎるのかなあ」と率直な感想を述べました。
 これに対して、河野さんは、「高速道路の無料化を政府は進めているが、フェリーのほうはあまり取り上げてくれない。偏っている」と注文をつけました。
 
 湯崎さんも「国は、橋と競合しない生活航路を残すといっているが、三原と瀬戸田を結ぶ航路などは橋で行けるから廃止、などとなると困ると思う(注)。残すべきは残したい」と決意を述べました。
(注:瀬戸田から西瀬戸自動車道経由で尾道へ出て三原までいけないことはないが、フェリーに比べても時間がかかる。また、瀬戸田から三原高校へ通ってくる生徒も多いことは、記者も三原庁舎勤務時代に毎朝、目撃している)
 
 ■外部者の視点で、思わぬ魅力発掘
 
 三原市の芸術文化センターセンター長の田中さんは、指定管理を請け負う会社の方で、横浜市から1年前に来られた方です。
 
 三原市芸術文化センターポポロ
 http://www.mihara-popolo.com/
 
 田中さんは、「三原市民ではわからない魅力もあるのではないか」、と指摘。田中さんは、浄瑠璃作家・並木宗輔について研究されているそうです。
 
 並木宗輔は元々は三原市出身で、お坊さんだったそうです。浄瑠璃の三大作も最近では、並木がメインとして作ったものではないか、ということが言われています。近松門左衛門、竹田出雲と並ぶ「日本のシェークスピア」として演劇界では脚光を浴びている。
 
 並木宗輔
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%A6%E6%9C%A8%E5%AE%97%E8%BC%94
 
 田中さんは「広島県としても是非並木宗輔を再評価してほしい。県として売り出してほしい」と要望し、湯崎さんも「地域づくりには、地元とともに外の人の目も必要だと思った」と感嘆していました。

 三原市の青年会議所会頭は、「若い世代の人が外へ出てみて自分のふるさとを大事に思うこともあるのではないか、と思う」と提起。湯崎さんに対しては、「現場をサポートしてほしい」と要望。湯崎さんも「県内のいろんなイベントを、バラバラではなく、この時期にはこういうイベントがある、などとつなげて紹介したい」と応じました。
 
 ■男女共同参画は横断的な課題
 
 三原市内で男女共同参画活動に取り組む女性は、「一般競争入札に際して、県として男女共同参画の視点を取り入れてほしい。そうすれば今まで以上に企業が取り組む。また、県の担当窓口は、現在環境県民局となっているが、男女共同参画の課題は、DV、教育、子育て、介護、医療など多岐にわたっている。企画振興局に窓口を移すべきだ」と提言しました。
 
 湯崎さんも「男女共同参画については関心を持っている。女性の社会進出とともに、男性も家庭も事を出来るようにしないといけない。自分自身はなかなかできていないが」と苦笑しながらも答えていました。
 
 ■活躍する人を「点から線へ」
 
 三原外語学校の本庄さんは、留学生の受け入れ、地域での国際交流に取り組んでいます。
 
 「数千の言語がある中で、日本語を選び、三原という地域を選んでくれたのはうれしい」と、おっしゃっていたのが印象的でした。
 
 本郷町で「絵本のおばちゃん」として有名な村上招子さん。ログハウスの公設民営の図書館を本郷駅前で運営しています。また、家では「家庭文庫ぽてと」を運営しておられます。絵本を通じて子どもたちの教育にがんばっておられます。
 
 家庭文庫 ぽてと - 基本情報
 http://mihara.genki365.net/gnkm05/mypage/mypage_group_info.php?gid=G0000039
 
 その村上さんは「点でがんばっている人は多いが、線でつながっていない。地域に「人材バンク」があればよいのではないか」「支援活動といっても、スキルアップがないと難しいのではないか?」と指摘しました。
 
 ■農業、家族経営も支援して
 
 市内大和町からは農業の男性が参加。米を1ヘクタールつくっても、1人12~13万円程度の収入にしかならない、と訴えました。
 そして、「経営の大規模化支援は、法人や団体ばかりに偏り、家族経営の大規模化への支援が手薄だ」と指摘。「県独自に、給与保障をしてほしい」と要望。
 また、就農支援について「就農だけでなく、継続が大事ではないか」と指摘しました。
 
 ■郷土発信、クリームパンで躍進
 
 三原市内で有名なクリームパンの八天堂の店主は、いまや知名度は全国区です。
 
 八天堂
 http://www.hattendo.jp/
 
 「くりーむパン」1本勝負 三原・八天堂100種から絞る(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hiroshima/news/20100204-OYT8T01389.htm
 
 午前中には売り切れになってしまうくらいおいしい。その八天堂さんの店主も、不況の中、狭くなるばかりのマーケットで競争することに閉塞感を感じていた。
 ところが、5年前に、東京で「広島・三原」という看板をみつけると、なんと三原の和菓子屋さんの和菓子が売っていた。このとき、郷土愛を感じたというのです。
 それからというもの、全国に商品を発信したい、と思ったそうです。その上で湯崎さんに対して「東国原知事のように、マスコミをもっと活用して営業マンになってほしい」と要望。湯崎さんも「現在、セルひろしま」キャンペーンをしている、と応じました。
 
 ■「高度成長をもう一度」ではなく「尊敬される国を」
 
 久井町から参加した方は、「活性化とか活力というとき、高度成長時代をもう一度、ではないと思う」と指摘。そうではなく、「世界から尊敬されるような国」をめざすべきではないか。とおっしゃいました。また、行政に対しては「計画を作って終わりということはないだろうか?」と苦言を呈した上で、自らの活動について紹介されました。
 
 この方は、人口5000人の久井町で、環境会議を73人で運営。自分たちの河川や里山を大事にすることで、環境をキーワードに、福祉や防災についても考えようとしています。
 現場での作業には5000人余りの人口のうち、180人もの人が参加してくれるそうです。
 50万都市の福山で言えば、1万8000人ですから凄い数です。
 
 ■個々の力をもっと生かす広島県に!
 
 論客から共通して出された論点として印象に残ったのは以下です。
 広島県では、高い意識を持って活動している人が「点」としては存在する。ところが、そうした人や団体が線につながっていない。線でつながれば、面に広がればもっと活動が広がる。そのことを惜しむ方が多かったのが印象的です。湯崎さんも「高い問題意識を持ったみなさんが広島県全体のリーダーになられればもっと広島県はよくなる」と檄を飛ばしましたがまったくそのとおりです。
 
 ■議会の発奮も必要!
 
 さて、点を線に、線を面にする場所は、制度的にはあります。議会です。市民の代理人の集まりである議会で、いろんな意見を出して話し合い、それを執行部にさせればいい地域ができる、というのが本筋です。
 それができていなかった。広島県の一つ一つの個人や地域の能力の高さが、地域活力に反映されてこなかった原因にのひとつには、議会の停滞があったと思われますが、いかがでしょうか? 事業仕分けをしないといけないのも、議会のチェックの怠慢です。
 
 最近では利益誘導が出来なくなったために、職員の悪口を言って、人々の溜飲を下げてもらう、くらいしかやることがないような議員の方も見受けられます。議会が非生産的な場所になってしまっている。
 
 そういう意味では、湯崎さんにせよ、三原市長(市民と市幹部の対話の場を設けている)の五藤康之さんにせよ、行政執行部がこういう形で、意見を聴いて回るのはよいことです。それとともに、議員たちの発奮がのぞまれます。わたしは、敢えて挑発します。「議員よ、何をしている!」人々の能力を引出すような生産的な議論をお願いしたいと思います。


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 関連リンク
 ようこそ知事室へ
 http://www.pref.hiroshima.lg.jp/page/1173257463983/index.html
 
 湯崎さんのTWITTER
 http://twitter.com/yuzakihide
 
 三原市役所
 http://www.city.mihara.hiroshima.jp/
 三原能力開発支援センター
 http://www.city.mihara.hiroshima.jp/shisei/kokyo-shisetsu/mihara/noukai.html
 

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