東京都世田谷区砧(きぬた)地域のタウンミーティング「区長と区民との意見交換会 地域の活性化・地域の絆の再生」が2010年2月7日に世田谷区成城の砧総合支所で開催された。世田谷区では5つの地域(烏山、北沢、世田谷、玉川、砧)で順番に意見交換会を開催しており、今回が最後になる。大荒れになった玉川地域に比べれば穏やかであったが、それでも参加者の不満が残った運営であった。
最初に熊本哲之・世田谷区長が挨拶した。熊本区長は経済情勢の悪化の中で区の歳入も大幅に減少する見込みであり、区民の力が必要であると強調した。続いて須田成子・砧総合支所長が地域の状況を説明した。砧地域は大型マンションの建設で人口が増加し、特に子どもの人口が多いとする。また、農地が多いため、緑地率が他地域に比べて相対的に高いとした。
意見交換は玉川地域の意見交換会と同じく、事前に住民が提出した質問票に基づき、司会者の指名によって行われた。多摩川の河川敷のグラウンドの土の飛散、汚水、豪雨対策、防犯パトロールカー、緑地の維持・拡大、独居高齢者の見守りなど住民の意見は多岐に渡ったが、陳情的な内容が多く、激しい意見対立にはならなかった。区長の答弁終了後に次の質問に移ろうとする司会者に対し、区長が「質問者が回答に納得したか確認しなさい」とたしなめるなど、余裕も見せていた。
玉川地域の意見交換会では論争になった区役所庁舎の建て替え問題も、あっさりと終わった。玉川地域では質問者が「横浜市など他の自治体では財政事情から庁舎建て替えの優先順位を落としている」と迫ったが、区長は「横浜は横浜、世田谷は世田谷」として、自分が責任を持って推進すると言い切り、平行線となった。
今回は質問者が庁舎の文化性の要否について区長の見解を質した。これは区本庁舎等整備審議会(照井進一会長)の答申(2009年8月13日)にある以下の内容に基づいている。
「本庁舎等に求められる『文化性』に関する意見として、第一庁舎、区民会館は、設計コンペによって選出された日本を代表する建築家(注:前川國男)が設計したもので、区民にとってもその文化的意義は高く、保存活用すべきであるという意見がありました。他方では、文化的価値がどれほどのものなのか、庁舎に文化性は必要ないという意見も少なくありませんでした」
質問者は庁舎に文化性を不要とした少数意見を暴論と批判したが、区長も「文化性が不要とは考えていない」と答弁した。
一方、住民間でも温度差のあった問題に外環道(東京外郭環状道路)があった。地権者であるという発言者は老後の生活設計のために早期の促進を訴えた。別の発言者は住民の意見を聞き、住民の総意が計画に反映されることを求めた。
外環道には環境問題が残っているとの指摘もなされた。大深度地下トンネルとなる外環道の換気塔から放出される排気ガスによる大気汚染が懸念されている。外環道単体だけでなく、清掃工場の排煙などと重合(複数の分子化合物が結合して別の化合物になること)して有害性が高くなる危険性も調査しなければ安全ではないと主張した。
興味深い内容として、区民の自助努力を求めた区長の発言があった。集中豪雨時に「浸水した地下室に閉じ込められた」などの救助要請が多数寄せられるが、行政では人手が足りず、完全に対応できないという。そのため、たとえば建築確認前に建築主が水害対応を十分に検討すべきと主張した。
これは二子玉川東地区再開発反対運動と通じるものがある。近隣住民が再開発の見直しを求める理由の1つに再開発が水害の危険を高めることが挙げられる(参照「二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進」)。これは行政任せにせず、水害に強い街づくりを目指す住民の自助努力であり、区長発言に合致している。この点で区は反対運動と協力できるにも関わらず、そのようになっていないところに不幸がある。
順調に進行した意見交換会も最後になって味噌を付けた。予定時刻を過ぎたために司会者が閉会しようとした際、参加者から「質問票を記入して提出したのに選ばれないとはどういうことか」との抗議の声が上がった。自分の質問の番が来るのを待っていたという。区内の2つの清掃工場から排出されるダイオキシン問題について発言しようとしたが、遮られた。
会場からは「話を聞きたい」「言論封殺するな」との声が出たが、終了させるという区側の姿勢は頑なであった。会場からの要望で発言を記録に残すことだけは約束した。玉川地域と同じく、後味の悪さが残ったタウンミーティングであった。
関連記事:世田谷区玉川、タウンミーティングの呆れた実態 2009/12/07
http://www.news.janjan.jp/area/0912/0912074112/1.php
二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進 2009/12/16
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912164460/1.php
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
http://sky.geocities.jp/hayariki4/
最初に熊本哲之・世田谷区長が挨拶した。熊本区長は経済情勢の悪化の中で区の歳入も大幅に減少する見込みであり、区民の力が必要であると強調した。続いて須田成子・砧総合支所長が地域の状況を説明した。砧地域は大型マンションの建設で人口が増加し、特に子どもの人口が多いとする。また、農地が多いため、緑地率が他地域に比べて相対的に高いとした。
意見交換は玉川地域の意見交換会と同じく、事前に住民が提出した質問票に基づき、司会者の指名によって行われた。多摩川の河川敷のグラウンドの土の飛散、汚水、豪雨対策、防犯パトロールカー、緑地の維持・拡大、独居高齢者の見守りなど住民の意見は多岐に渡ったが、陳情的な内容が多く、激しい意見対立にはならなかった。区長の答弁終了後に次の質問に移ろうとする司会者に対し、区長が「質問者が回答に納得したか確認しなさい」とたしなめるなど、余裕も見せていた。
玉川地域の意見交換会では論争になった区役所庁舎の建て替え問題も、あっさりと終わった。玉川地域では質問者が「横浜市など他の自治体では財政事情から庁舎建て替えの優先順位を落としている」と迫ったが、区長は「横浜は横浜、世田谷は世田谷」として、自分が責任を持って推進すると言い切り、平行線となった。
今回は質問者が庁舎の文化性の要否について区長の見解を質した。これは区本庁舎等整備審議会(照井進一会長)の答申(2009年8月13日)にある以下の内容に基づいている。
「本庁舎等に求められる『文化性』に関する意見として、第一庁舎、区民会館は、設計コンペによって選出された日本を代表する建築家(注:前川國男)が設計したもので、区民にとってもその文化的意義は高く、保存活用すべきであるという意見がありました。他方では、文化的価値がどれほどのものなのか、庁舎に文化性は必要ないという意見も少なくありませんでした」
質問者は庁舎に文化性を不要とした少数意見を暴論と批判したが、区長も「文化性が不要とは考えていない」と答弁した。
一方、住民間でも温度差のあった問題に外環道(東京外郭環状道路)があった。地権者であるという発言者は老後の生活設計のために早期の促進を訴えた。別の発言者は住民の意見を聞き、住民の総意が計画に反映されることを求めた。
外環道には環境問題が残っているとの指摘もなされた。大深度地下トンネルとなる外環道の換気塔から放出される排気ガスによる大気汚染が懸念されている。外環道単体だけでなく、清掃工場の排煙などと重合(複数の分子化合物が結合して別の化合物になること)して有害性が高くなる危険性も調査しなければ安全ではないと主張した。
興味深い内容として、区民の自助努力を求めた区長の発言があった。集中豪雨時に「浸水した地下室に閉じ込められた」などの救助要請が多数寄せられるが、行政では人手が足りず、完全に対応できないという。そのため、たとえば建築確認前に建築主が水害対応を十分に検討すべきと主張した。
これは二子玉川東地区再開発反対運動と通じるものがある。近隣住民が再開発の見直しを求める理由の1つに再開発が水害の危険を高めることが挙げられる(参照「二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進」)。これは行政任せにせず、水害に強い街づくりを目指す住民の自助努力であり、区長発言に合致している。この点で区は反対運動と協力できるにも関わらず、そのようになっていないところに不幸がある。
順調に進行した意見交換会も最後になって味噌を付けた。予定時刻を過ぎたために司会者が閉会しようとした際、参加者から「質問票を記入して提出したのに選ばれないとはどういうことか」との抗議の声が上がった。自分の質問の番が来るのを待っていたという。区内の2つの清掃工場から排出されるダイオキシン問題について発言しようとしたが、遮られた。
会場からは「話を聞きたい」「言論封殺するな」との声が出たが、終了させるという区側の姿勢は頑なであった。会場からの要望で発言を記録に残すことだけは約束した。玉川地域と同じく、後味の悪さが残ったタウンミーティングであった。
関連記事:世田谷区玉川、タウンミーティングの呆れた実態 2009/12/07
http://www.news.janjan.jp/area/0912/0912074112/1.php
二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進 2009/12/16
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912164460/1.php
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
http://sky.geocities.jp/hayariki4/
