熊木秀夫

 ハイチの地震から間もなく1ヶ月(2010年1月12日16時53分(UTC=21時53分、日本時間=13日6時53分)が、経とうとしている。この地震の詳細については、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に掲載されているので、それを見ていただきたい。
 
 この地震は、ハイチが長い植民地支配の結果、最極貧国、超債務国となり、これといった産業がなく、貧しい生活のなかで、戦後の日本の闇市のように、外国の商品に溢れて、それを買わなければ生活が出来ない状態に置かれているとき、起こった大きな自然災害だが、それにしても多くの人命が失われた。手抜き工事を許す汚職が蔓延しているためか、被害が想像を超える。
  
 世界各国の救援活動は広がっているが、それが一時的に民心を安定させるだけでなく、この国の将来にとって何が必要かという根本問題にかかわった再建策が求められる。それは、首都・ポルトープランスの4分の3が再建の必要といい、被災者は総人口の約3分の1にあたる300万人が被災したと推計されていることでも分かる。
  
 長年の不安定な政情が続き、統治能力を欠く政府は、住居建築における「手抜き」と「賄賂」が蔓延し、いい加減な計画書でも許可されることが多かった。
  
 1月20日、防衛省は陸上自衛隊第13後方支援隊100名が「ハイチ国際緊急医療援助隊」として、現地に向け日本を出国した。カナダのモントリオールで開かれた復興支援の閣僚級会合に出席した武正公一外務副大臣は、追加支援策として約7000万ドル(約63億円)の拠出を表明したが、既に1999年代から始まっている、日本政府と民間の協力で始まっているプロジェクトに注目してもらいたいと思う。
  
 この国で1999年から始まっているバナナペーパープロジェクト(名古屋市立大学院・森嶋教授指導)は、バナナ繊維を取り出し、紙や繊維の利用によって仕事を作り、教育を進めることを目指してきた。
  
 ハイチの国土は日本の四国と同じ広さ、人口は900万人以下で東京都より少ない。国連平和維持軍の監視下にあるとはいえ、ハイチが長期にわたって繁栄できる施策を進めるべきで、いたずらに自衛隊を出動させるより、何がこの国に必要なのか、東京には国連大学もあるのだから、調査と研究を進めて、この国の発展に寄与すべきではないか。
  
 2001年2月に、学研から出版されたハイチのバナナの紙でつくった絵本『ミラクル・バナナ』の終わりの4頁に「バナナの紙ができるまで」という森嶋紘史教授(バナナ・ペーパープロジェクト・リーダー)の言葉がある。それを次にかかげる。
  
 「わたしたちの国では、バナナの木が たくさん すてられています。なにかに使えないでしょうか?
  
 とおい南の島にある国から、一つのメールが、 インターネットでとどきました。わたしは、とつぜんあることを 思いつきました。そうだ、紙は木からできている。バナナの木だって、きっと 紙になるはずだ! 
  
 バナナの木は、バナナがなると 根もとからきられ、すてられます。そうすると、よこからあたらしい芽がのびて 3ヶ月から6ヶ月で またバナナの実がなります。
  
 世界の123の国で、さいばいされているバナナは、5800万トンもあります。(2000年FAO統計)
  
 いま、世界中でつくられている紙の95%は、森の木からつくられています。そして、紙をつかう量は、毎年ふえつづけています。(日本製紙連合会)
  
 もし、バナナの木から紙ができたら、そのぶん、森の木をきらなくてすみます。森にすむ虫や動物たちも きっと、よろこぶでしょう。
  
 南の島にある、ハイチという国では 文字をよめない人が 半分いじょうもいます。バナナの木から、紙が作れるようになれば、 それが、仕事になります。子どもたちは、教科書やノートをつかって、 勉強ができます。
  
 日本のせいふと、紙をつくったり、本を作ったりする会社が、おうえんすることになって、わたしたちは、ハイチへ行くことになりました。
  
 ハイチの人たちは、おうよろこびで、わたしたちを むかえてくれました。だいとうりょう夫人をリーダーに、みんなできょうりょくして、紙をつくることになりました。
  
 200人のわかものたちが すてられているバナナの木のくきをあつめて、竹のナイフでしごくと、バナナ色の、とてもきれいなせんいが、たくさんとれました。そのせんいが、紙のもとになります。
  
 さっそく、ハイチの大学で、紙をつくるじっけんをしました。つくりかたは、わ紙のしょくにんさんが教えました。
  
 そして、うつくしい紙ができました。 はじめてみるバナナの紙に、ハイチの人たちはおおさわぎでした。
  
 『世界中のおともだちに、バナナの紙を見てもらおう』 みんなでそうだんし、バナナのせんいをあつめて、船で日本におくることになりました。
  
 日本の港についた バナナのせんいは、トラックで、紙をつくる工場に はこばれました。そして、できあがったのが、この絵本につかわれているバナナの紙です。 国をこえて、みんなのきょうりょくで作った、たいせつな、すばらしい紙です。」
  

 去る1月10日のオムニバス『バナナ・ペーパーをベトナムで』( http://www.janjannews.jp/archives/2101164.html )の中で紹介した森嶋教授(前記)の『バナナ・ペーパー、 持続する地球環境への提案』(鹿島出版2005年刊)は、地球をデザインするといってもいい入門書。この本には、ハイチを今後どのようにして復興させていくか、のヒントがあると思う。