三田村伸

 ロシア(ソ連)の元戦車兵軍曹ミハイル=カラシニコフが設計開発した自動小銃AKシリーズ(原型のAK-47、改良型のAKM、小口径型のAK-74)については、新聞・TVのニュースや一般週刊誌などで何度も目にしてきたが、いざ本腰を入れて一冊まるごと集中的に取り上げた本を読むのはこれが初めてである。
 
 読後感として、まず最初に強く印象に残ったのは、この兵器が「小さな大量破壊兵器」たる理由であった。すなわち、
 
 1.操作の簡便性:同書第1章・第5章でも触れられているように、AK自動小銃の場合、操作方法を覚えるのが簡単であり、未熟練の新兵(特に後述する子ども兵士)であっても、すぐに1分間600発を射撃可能なこの銃の撃ち方から分解組み立て整備までを容易に覚えられること。
 
 2.構造の堅牢性:1.とも関連するが、稼働する部品が少なく、また部品間にわざと隙間を与えるなど、構造自体が実に単純化されているため、泥濘地帯・砂漠を問わず、また長期間放置されてろくに整備を設けていない状態であろうとも確実な発射が可能であるほどの耐久性・堅牢性を有すること。
 
 3.製造の容易性:2.とも関連するが、構造自体が単純であるため、また冷戦期にソ連や中国がその勢力圏の国々に製造技術や工作機械を輸出したりライセンス生産を許したりしたため、同シリーズ銃の製造が旧共産圏諸国のみならず、パキスタンを始め他の紛争地域にまで広がっており、かつそれら生産国からの輸出で同シリーズ銃の拡散にますます拍車がかかっていること。
 
 である。
 
 構造が単純で製造が容易、その上に操作が簡単で耐久性も抜群となれば、全地球規模でカラシニコフシリーズ銃が拡散し、紛争地域と名づけられた所で必ずその姿を見ることができる理由も納得できる。また、同銃が子どもでも単純に扱えるという理由ゆえに、紛争当事者勢力が勢力圏下の「子ども」を兵士として徴募することの敷居を下げているともいえる現実が同書第5章を読むと具体例を示して読む者の心に迫る。
 
 第六章では、この銃種そのものを地上から廃絶するための方策が述べられているが、その道はあまりに遠く険しいと感じざるを得ない。なにしろ本書でもくり返し記述されている通り、欧米主要諸国の企業が先を争ってカラシニコフ銃の紛争地域(アフガン・イラク・パレスチナ・ソマリア・モザンビーク・南ア・アンゴラ・ナイジェリア・コロンビア他)への売り込みを現在進行形で行っているからだ(まさしくアンドリュー=ニコル監督の映画『ロードオブウォー』に描写されているように。ちなみに同映画は、武器取引の現場をあまりにリアルに描いていた内容ゆえか、同監督によると制作資金集めが本国米国では難航したそうだ)。
 
 諸外国に比べて、現実的な武器取引の少ない日本に住む人間として、この「小さな大量破壊兵器」が世界全体に及ぼす脅威の現実を思い知らせてくれる『警告の書』としては意義ある本だと強く感じた。
 
 余談:同書P41で、「現在、世界で武器を国旗に取り入れているのは、この旗(評者注:モザンビーク)だけです」とあるのは誤りだろう。サウジアラビア王国国旗の場合、銃ではないが「刀剣」が緑色の下地に白抜きで同国旗下部に記されている。惜しむらくは、このあたり、同書は細部の考証に少し甘さがあるように思えるのが気になった。