さとうしゅういち

 なごやボランティアNPOセンター労組書記長・Yさんの解雇事件。
 
 前回の2010年2月17日の第5回目の審尋で、ワーカーズコープ側は従来の「十分に無茶な主張」に加えて「おそるべき」主張を行いました。
 
 そのひとつは、前回の記事で報告した「さとうしゅういちとYさんは同一人物である」
 という主張でした。驚きを通り越して呆れてしまいます。
 
 今回は、もうひとつの、当局側の恐るべき主張を紹介します。
 
■訳が分からない状態におかれたYさん
 
 Yさんはワーカーズコープに監禁査問されて体調を崩したあとも監禁査問されつづけ、やっとのことで逃げ出して公園で野宿をしました。
 
 そのころYさんは既に家を失っており、帰る場所がなかっただけでなく、監禁査問によって精神的に追い詰められて、友人宅に泊めてもらう交渉をしたり、ネットカフェなどに移動する気力も無くなっていたからでした。
 
 公園で目覚めたYさんは、その足で役所に向かい生活保護の申請をしましたが、役所の人間は非情にもYさんに対して「水際作戦」を展開し、医療だけで他の申請は辞退するという書類を書かないと、申請をさせないと言いました。それが役所の嘘だと分かっていても、既に気力が尽きていたYさんは、詳細を記録して医療だけの生保を獲得しました。
 
 しばらくの間、友人達の協力を受けながらなんとか生活をして、申請をやり直して、生活保護を獲得して、まともに通院治療をできるようになりました。そして、気力を振り絞って今回の裁判に訴え出て、数々のワーカースーコープの珍妙な主張に、弁護士ともども目を丸くする事態に陥ったわけです。
 
 さらに、Yさんはさとうしゅういちと同一人物だと言われて、さらによくわからない話となっています。
 
 ワーカーズコープ側は、あきらかに監禁査問によって発作が再発しているにも関わらず、さらには、事前にYさんの親から、持病についての忠告を受けているにも関わらず、監禁査問をして「案の定」発作が起きてしまいました。さらに、それにも関わらず(意図的に追い詰めた?)Yさんの病気が「ほんものかどうか疑わしい」という、信じられない主張を行いました。ですが、ワーカーズコープの行った「おそるべき主張」は、この部分のことではありません。
 
■Yさんがわの主張は過度ではない
 
 また、この仮処分にあたって、Yさん側の主張はそれほど過度なものではありません。
 まずは、復職を求めています。これだけこじれた後なので難しい面もありますが、それが無理な場合は、なんらかの和解には応じる方針です。
 
 また、一方的にシフト削減によって減らされた賃金について、もともとの賃金の水準で支払うように求めています。Yさんは働き始めた当初、20-22万円ほどの賃金で働いていましたが、当局の嫌がらせによって、「来月から常勤になる」と言われた2008年8月の翌月(9月)に、常勤の話を反故にするだけでなく、一方的にシフトが減らされて、8万円ほどの賃金となりました。実に半額以下です。
 
 途中「脳内出向」などの問題も経て、なんら改善のないま半年以上放置されました。そして、Yさんは年祭り越冬にホームレスの人と一緒に炊き出しに並び、ホームレスの人たちに「俺達よりもひどい生活をしている」と、逆に同情されて親切にされる、という状態になっていました。

裁判資料写真

Yさんの解雇事件についての仮処分の資料。(撮影・さとうしゅういち)右手の分厚いファイルが、裁判所に提出された、Yさん、ワーカーズコープ側の資料のファイル。証拠資料、陳述書、主張書面などで、10センチ近い厚さになっている。「仮処分」というのは、3回ほどで終わるもので、書類のみで行われるので、短く決定が出ると言われているが、Yさんの事件は既に次回で6回目、実に半年以上かかっている。


■Yさんにとっては得にならない裁判
 
 Yさん側は、減らされる前の賃金をまとめて支払うことを要求しています。どれだけの期間になるのかは、よくわからないのですが、それなりにまとまった額になることは確かです。ですが、仮に支払われたとしてもYさんの懐には入りません。
 
 なぜかというとYさんは現在、病気療養もあり生活保護を受給しており、仮に支払われても、全額その費用の補填として役所に納めることになるわけです。つまりYさんには、びた一文入らず、まったく得をしない裁判をしているのですが、それでもYさんとその弁護士は「市民に愛されていたセンターで起こった理不尽な事件の究明」のために、真実を広めるために戦うので意味はある、と言っています。
 
 さて「たとえ自らの懐にお金が入らなくても戦う」というのは、Yさん側の覚悟の話です。Yさんは全く儲かりませんが、客観的には、Yさんの生活と病気療養を支えるお金を、役所の税金ではなく、ワーカーズコープに支払わせるといのは、十分意義がある戦いであるといえます。
 
■「生保受給者だから賃金仮払い必要なし」
 
 ところが、前回の審尋で、ワーカーズコープ側の主張内容には「現在Yさんは生活保護を受給しているので、賃金仮払いの必要はない」ということが書かれていたのでした。これは、とんでもない内容です。
 
 Yさんが生活に困窮して病気が悪化しているのは、ワーカーズコープに原因があるから、その補償をしろといっているのです。万が一、病気についての補償がないとしても、賃金を一方的に減らしたことの補填はしろ、生保の税金を返して、それで生活するからと、Yさんは言っているのですが、ワーカーズコープ側は「生保で生活しているから、それでいいだろう」と言っているのです。
 
 このような無茶な理屈がまかり通るのであれば、企業が違法に首を切って路頭に迷った人に対して、その企業が「生保を申請すればいいだろう」ということが、まかり通ってしまいます。
 
 たしかに、派遣切りにあって路上生活を余儀なくされている人たちが生保を申請するのは正しいと思いますが、彼らの生活の費用は、本来は派遣切りを行った企業が支払うべきものでしょう。実際に、労働組合に相談し、企業に違法な行為があったことを指摘し、お金を払わせた例もあります。
 
 それ以前に、いくら派遣切りを繰り返している極悪な企業でも、さすがに「生保があるからいいだろ」と言い放てる企業は、なかなかお目にかかれるものではありません。

 ワーカーズコープは、本来は「労働者=資本家=経営者というスタイルをとることにより、資本による収奪と言う資本主義の弊害を防止する」というのがその理念です。しかし、現実には、「貧困ビジネス」の一緒なのかもしれないという錯覚に陥りました。


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