青木岳陽

 マスコミやJANJANにおいて外国人参政権の問題が大きく取り上げられています。ネット上には賛否両論が飛び交っていますが、その一方で、いまや地方では、日系ブラジル人や中国人研修生・実習生といった外国人の労働力に頼らなければ産業が成り立たない状況にあります。また、結婚難の時代にあっては、30代後半以上の男性を中心に海外に伴侶を求める方が増えて、急速に地域の多民族化、多文化社会化が進んでいます。
 
 私は、仕事の傍ら趣味で中国語学習や日中協会の活動をしてきました。中国語を身につけるのに最もよい方法は、研修生を受け入れている工場に頼んで、彼ら彼女らと日本語・中国語を相互学習することでした。こうした中国人に日本語を教えるボランティアからは、私自身も妻という縁をもらい現在に至ります。
 
 そこで、私の経験から、現在の日本、特に地方で求められている外国人支援や国際結婚の問題点などを述べたいと思います。外国人問題は非常に多岐にわたるので、ここでは特に断らない限り、中国からのお嫁さんについてテーマを絞りますのでご了承ください。
 
1.現実の外国人問題に対処できない友好活動
 私は中部地方のある県の日中協会で役員をしています。会員の職業は大学教員から公務員、中国の日系企業社長、会社員、退職者、主婦までさまざまですが、市井人が主体になった民間団体です。私たちは「政府外交と民間交流は外交関係の両輪である」との信念から、県庁の国際交流支援事業を受けて、県内イベントでの中国紹介展や、中国の大学や市民向け日本紹介展の開催などを通じて両国の架け橋となるべく活動してきました。
 
 しかし、10年、20年前に比べ、日本で流れる中国の情報量は格段に増加し、いまやテレビや新聞、インターネットを覗けば毎日のように最新の政治、経済、文化、流行を知ることができます。日本人が関心を持つ中国も、かつてのシルクロードやパンダブームのように、悠久の歴史や珍しい動物といったイメージ的なものから、日々躍進する中国経済の動向など、より具体的で専門的なものに変わってきました。事情は中国における日本認識でも同じでしょう。たとえば日本アニメは中国人の学生や若者のほうが、アニメに関心のない日本人よりもはるかに詳しいのですから。
 
 限られた人が行き来して「友好、友好」と言っていた時代より、両国の間はずっと密接に、深く、広く、普通の関係になってきたということです。そうしたなかで、中国専門家でもない市井人の集まりである民間団体が大きな県単位の日中交流を担う、という役割は相対的に低下しています。
 
 日中協会では、毎年の活動として、県内の留学生や研修生などの中国人に日本文化を紹介するために、定期的な交流会や日帰り旅行を企画してきました。かつては「日本を知りたい」と願う学生や研修生が多く集まり、大学や企業も応援してくれて好意的に交流活動を支えてもらえました。
 
 しかし、いずこも同じ財政難によって、さまざまな方面の支援を受けることが難しくなりました。県主催のイベント、公的支援を受けた交流会なども縮小・廃止の流れです。また、留学生たちも物価の高い日本での生活が厳しく、アルバイトの方が大事だと思えば休日の活動になかなか参加してくれません。
 なりより、留学生や研修生をはじめ日本で暮らす中国人が増えて街中で同胞とすれ違うことが当たり前になり、ケーブルテレビやパソコンで中国の放送がそのまま受信できる現在、石川啄木の「ふるさとの訛りなつかし停車場の・・・」という気持ちで交流会に足を運ぶ必要は薄れてきたのだと思います。
 
 また、在住中国人の数が増えることによるトラブルの増加、特に研修生や技能実習生をめぐる待遇トラブルや脱走、不法残留、刑事事件が多くなると、企業側では「他企業の中国人と一緒にさせたくない」という防衛意識が働きます。
 日帰り旅行の趣旨に理解を示して、研修生たちの参加を申し込んだ会社が、旅行前日になって休日残業によるキャンセルを通告してきたこともありました。意図的なものか分かりませんが、主催者である私たちは参加者と旅行契約を結んでいないので、キャンセル料を被るなど苦労しました。
 
 一方、結婚難の時代を迎えて、いわゆる結婚紹介業者による中国お見合いで結婚する日本人男性が増え、来日する中国人のお嫁さんも年々増加しています。こうした国際結婚の方は日本社会にダイレクトに参加する反面、留学生や研修生と違って、在日中国人の横のつながりを持つことや、中国人向けの社会支援を受ける機会がありません。
 また、日本語コミュニケーションや自動車免許がない不自由さから、家庭に篭(こも)って地域から孤立するケースも少なくありません。民間ベースの交流活動としては、より地域に密着した「結婚移民」に対する日本理解や語学、地域社会への参加の支援を提供することが大切になると考えています。
 
2.結婚移民への支援と問題
 私は国際結婚で妻が中国人です。近在でも中国からのお嫁さんが来た話をよく聞くようになり、また、実際に相談を受けることもあって関心がありました。そして、地域で外国人支援を行っている方から頼まれて、とある国際開発のNPO団体が国内事業として行っている「花嫁の会」を夫婦でお手伝いしました。NPOによる同会への支援は補助事業の期限が終了することから3年で終わりましたが、何点か気になることがありました。
 
 まず、東南アジア、南アジアで農村の人材開発支援を行っているNPO団体には、中国の知識や中国語の理解力を持つスタッフがいませんでした。個人で外国人支援に取り組み、花嫁の会を主催している方は中国語が少し話せますが、「市民中国語講座で勉強した成果を生かしたい」というボランティアの方たちには、実際に会話できるほどの語学力がありません。
 より日本に密着した生活習慣を理解してもらいたいと願うと、中国人妻向けの学習会は内容が高度になって前に進みません。かといって、スタッフやボランティアのレベルに合わせると、ありきたりの日本語教材の域を出るものでなく、参加者の要求とギャップが生じていきました。
 
 ところで、花嫁の会には外国人問題を研究テーマにする大学院生がボランティアとして遠路通っており、中国語が話せるので重宝されていました。ところが、大学院生の論文のために協力したアンケートの質問がとても失礼だと参加者から抗議を受けた結果、NPOが中国人妻と旦那さんたちに謝罪するという事態に陥ります。
 大学院生の外国人に関する問題意識や現場に飛び込む行動力には敬服しますが、知識に頼る若さと経験不足からか、前のめりになったのでしょう。いわく「日本に来たお嫁さんは、専制的な夫に悩み、家族や地域からも孤立しているに違いない」といった、いかにも「不幸な夫婦像」に誘導する恣意的なアンケート内容でした。
 NPOは大学院生に出入り禁止を言い渡したようですが、結局、正義感が強そうだったわりには、本人からの謝罪がなかったそうです。
 
 一方、花嫁の会に参加している方たちは、少なくとも会本来の目的である「支援を必要としている人たち」ではありません。夫婦連れの参加が少ないのは残念ですが、自分で車を運転してくる人はある程度の日本語ができ(日本語で運転免許を取得した)、時間や行動の自由がきき、なおかつ旦那さんや家族の理解もある人だからです。しかし、地域社会への適応ができる人たちはパートや子どもの保護者会などで忙しくなり、アマチュアレベルの花嫁の会から巣立っていきます。新規参加者はなく、活動もだんだんマンネリ化していきました。
 
 そこで、「支援を必要としている人たち」に輪を広げようと、地域の公民館で餃子パーティを企画しました。市の広報紙や新聞のイベント欄に案内を載せ、市役所の外国人登録窓口にもチラシを置きました。また、私は市の福祉担当者から頼まれて国際結婚夫婦の相談にのったこともあり、そうした担当者や知り合いのつてを通じて、中国人妻たちに声をかけてもらいました。
 
 市役所や新聞社には好意的に協力してもらえましたが、もちろん個人情報の壁があって単なる「お知らせ」にとどまります。また、公的な方法では「支援を必要としている人たち」まで届かないのか、集まってきたのは社会参加の意欲のある方たちであって、相談を求めているであろう、問題が隠れてしまっているような家庭の方がいないのが現状でした。
 しかし、前記の大学院生のアンケートだって、対象者に面と向かって決め付けるような質問は失礼でしたが、「そんな事例は存在しない」と言い切ることもできないのです。では、具体的にどのような問題で困っているのでしょうか。

 次回は、私が実際に相談にのったケースをご紹介します。