民族差別を助長すると批判されたものの、ネット右翼からは支持された『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)の著者・山野車輪氏が新作『「若者奴隷」時代』(晋遊舎)を2010年3月15日に発売した。同書は世代間差別をテーマにしたもので、若者が高齢者に搾取されていると訴える。
ネットカフェ難民や内定取り消し、ニート、派遣切り、ワーキングプアなど若者を取り巻く環境は厳しい。若者は貯金することも結婚することもできなくなった。しかし、それらに若者が責任を感じる必要はない。元凶は異常なまでの高齢者への優遇であると同書は主張する。『マンガ嫌韓流』で韓国・朝鮮人に向けられていた憎悪のターゲットを高齢者に移したような書籍である。
予め断っておくが、私は『マンガ嫌韓流』を支持しない。反対に『マンガ嫌韓流』を支持する層(ネット右翼)が広がっている現状を憂慮している。しかし、『マンガ嫌韓流』の著者が高齢者批判を展開したことはネット右翼を理解する鍵になるために、本記事で取り上げる。
私は書評記事で「ルサンチマンの蓄積したネット右翼などが声高に『嫌韓』を叫ぶ傾向が見られる」と記した(「『韓国現代史60年』の感想」)。ここにはネット右翼が増えた理由を、格差社会化する日本でルサンチマンが鬱積した若者を中心とする人々が、自らの卑小な自尊心の代わりに民族的自尊心で代償するためとする分析がある。しかし、この分析は半分しか答えになっていない。
現代日本の若者が虐げられ、搾取されていること、そして虐げられた人々が政治意識を高めることまでは説明できる。しかし、政治意識に目覚めた結果、右傾化すること、弱者(たとえば差別に苦しむ在日韓国・朝鮮人)に冷酷になれることは当然の帰結ではない。
戦後日本の支配体制は一貫して右の側であった。社会に不満があるならば左傾化する方が自然である。また、虐げられた人々が他の弱者の一層の不幸を望むことは、人間の浅ましい側面であるとしても、真面目に問題意識を持つ人の態度ではない。これらの疑問は『「若者奴隷」時代』に見られる高齢者への反感が答えになる。
私は右派でも左派でもない。私が社会性を強めた契機は大手不動産会社との新築マンション購入トラブルであった。右派であるか左派であるかは問題外であった。トウ小平氏は「黒い猫でも、白い猫でも、鼠を捕るのが良い猫」と発言したが、私もマンション購入トラブルの助けになるならば党派やイデオロギーは問題にならなかった。
しかし、新築マンションだまし売りに苦しむ私に共感してくれたのは左派であった(「市民メディアは「左」が定位置」)。私が左派に見えるとしたら、苦しむ人に冷たい日本の右派の偏狭さが原因である。
そのような私でも左派の体質に疑問を感じることがあった。平等を重視する一方で、世代間差別には無自覚な点である。その一例として私が呼びかけ人に名を連ねるメーリングリスト「CML(市民のML)」で若い女性議員を「ちゃん」付けで呼ばれた件がある。「ちゃん」付けした当人は「自分の子どもくらいの世代の女性議員に「ちゃん」付けすることは親しみを込めてのもので、差別的意図はない」と主張した。一方で、当人は発言者に差別的意図がなくても差別の構造を生み出す発言は問題であると他者の発言を批判していた。この点の矛盾を指摘したが、問題意識が通じたかは疑わしい。
このような体質がある限り、若者から広汎な支持を得ることは難しい。世代間差別に無自覚な左派の体質への絶望と反感が、社会に不満を持つ若者をネット右翼にさせている。前述のとおり、私はマンション購入トラブルを出発点にしているため、その助けになる限りにおいて右派とも積極的に情報交換しているが、彼らは左派に「団塊世代の懐古趣味」というステレオタイプなイメージを抱いている。左派のイデオロギー以前に世代間ギャップへの抵抗感が強かった。その意味でネット右翼と世代間差別批判はマッチする。
私も世代間差別について問題意識を有している(「ここにも世代間格差『名ばかり管理職』」)。それでも私がネット右翼に流れなかった理由は新築マンションをだまし売りした不動産会社という明確な敵を認識していたためである。正しい敵を認識していたために、「在日特権」のような虚構に矛先を向けることもなかった。
世代間差別は韓国・朝鮮人差別に比べれば取り組む価値のある問題である。しかし、十把一絡(じゅっぱひとからげ)な高齢者批判は、世代間差別を生み出した制度的・構造的要因を放置してしまう。また、高齢者の中にも社会的弱者が存在するが、そのような層を叩いて卑小な自尊心を満足させるならば、韓国・朝鮮人差別と同じ病理に陥ることになる。
現在日本は多くの矛盾を抱えており、若者は怒って当然である。むしろ大人しすぎるくらいである。しかし、間違った方向に怒ることは矛盾に責任のない他者(在日韓国・朝鮮人など)を傷つけ、本来の矛盾を温存させてしまうことになる。その意味で社会性に目覚めた若者がネット右翼となってしまう現状は社会にとって大きな損失である。
関連記事:
『韓国現代史60年』の感想
http://www.book.janjan.jp/0810/0810058794/1.php
市民メディアは「左」が定位置
http://www.news.janjan.jp/media/0910/0910302452/1.php
ここにも世代間格差『名ばかり管理職』
http://www.book.janjan.jp/0809/0809086578/1.php
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
http://sky.geocities.jp/hayariki4/
ネットカフェ難民や内定取り消し、ニート、派遣切り、ワーキングプアなど若者を取り巻く環境は厳しい。若者は貯金することも結婚することもできなくなった。しかし、それらに若者が責任を感じる必要はない。元凶は異常なまでの高齢者への優遇であると同書は主張する。『マンガ嫌韓流』で韓国・朝鮮人に向けられていた憎悪のターゲットを高齢者に移したような書籍である。
予め断っておくが、私は『マンガ嫌韓流』を支持しない。反対に『マンガ嫌韓流』を支持する層(ネット右翼)が広がっている現状を憂慮している。しかし、『マンガ嫌韓流』の著者が高齢者批判を展開したことはネット右翼を理解する鍵になるために、本記事で取り上げる。
私は書評記事で「ルサンチマンの蓄積したネット右翼などが声高に『嫌韓』を叫ぶ傾向が見られる」と記した(「『韓国現代史60年』の感想」)。ここにはネット右翼が増えた理由を、格差社会化する日本でルサンチマンが鬱積した若者を中心とする人々が、自らの卑小な自尊心の代わりに民族的自尊心で代償するためとする分析がある。しかし、この分析は半分しか答えになっていない。
現代日本の若者が虐げられ、搾取されていること、そして虐げられた人々が政治意識を高めることまでは説明できる。しかし、政治意識に目覚めた結果、右傾化すること、弱者(たとえば差別に苦しむ在日韓国・朝鮮人)に冷酷になれることは当然の帰結ではない。
戦後日本の支配体制は一貫して右の側であった。社会に不満があるならば左傾化する方が自然である。また、虐げられた人々が他の弱者の一層の不幸を望むことは、人間の浅ましい側面であるとしても、真面目に問題意識を持つ人の態度ではない。これらの疑問は『「若者奴隷」時代』に見られる高齢者への反感が答えになる。
私は右派でも左派でもない。私が社会性を強めた契機は大手不動産会社との新築マンション購入トラブルであった。右派であるか左派であるかは問題外であった。トウ小平氏は「黒い猫でも、白い猫でも、鼠を捕るのが良い猫」と発言したが、私もマンション購入トラブルの助けになるならば党派やイデオロギーは問題にならなかった。
しかし、新築マンションだまし売りに苦しむ私に共感してくれたのは左派であった(「市民メディアは「左」が定位置」)。私が左派に見えるとしたら、苦しむ人に冷たい日本の右派の偏狭さが原因である。
そのような私でも左派の体質に疑問を感じることがあった。平等を重視する一方で、世代間差別には無自覚な点である。その一例として私が呼びかけ人に名を連ねるメーリングリスト「CML(市民のML)」で若い女性議員を「ちゃん」付けで呼ばれた件がある。「ちゃん」付けした当人は「自分の子どもくらいの世代の女性議員に「ちゃん」付けすることは親しみを込めてのもので、差別的意図はない」と主張した。一方で、当人は発言者に差別的意図がなくても差別の構造を生み出す発言は問題であると他者の発言を批判していた。この点の矛盾を指摘したが、問題意識が通じたかは疑わしい。
このような体質がある限り、若者から広汎な支持を得ることは難しい。世代間差別に無自覚な左派の体質への絶望と反感が、社会に不満を持つ若者をネット右翼にさせている。前述のとおり、私はマンション購入トラブルを出発点にしているため、その助けになる限りにおいて右派とも積極的に情報交換しているが、彼らは左派に「団塊世代の懐古趣味」というステレオタイプなイメージを抱いている。左派のイデオロギー以前に世代間ギャップへの抵抗感が強かった。その意味でネット右翼と世代間差別批判はマッチする。
私も世代間差別について問題意識を有している(「ここにも世代間格差『名ばかり管理職』」)。それでも私がネット右翼に流れなかった理由は新築マンションをだまし売りした不動産会社という明確な敵を認識していたためである。正しい敵を認識していたために、「在日特権」のような虚構に矛先を向けることもなかった。
世代間差別は韓国・朝鮮人差別に比べれば取り組む価値のある問題である。しかし、十把一絡(じゅっぱひとからげ)な高齢者批判は、世代間差別を生み出した制度的・構造的要因を放置してしまう。また、高齢者の中にも社会的弱者が存在するが、そのような層を叩いて卑小な自尊心を満足させるならば、韓国・朝鮮人差別と同じ病理に陥ることになる。
現在日本は多くの矛盾を抱えており、若者は怒って当然である。むしろ大人しすぎるくらいである。しかし、間違った方向に怒ることは矛盾に責任のない他者(在日韓国・朝鮮人など)を傷つけ、本来の矛盾を温存させてしまうことになる。その意味で社会性に目覚めた若者がネット右翼となってしまう現状は社会にとって大きな損失である。
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市民メディアは「左」が定位置
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
http://sky.geocities.jp/hayariki4/
